2011年06月03日

『さまよう刃』にやり切れない思いが…

東野圭吾作品は大好きなんですが…
と言っても小説を読んだことはないんです。
どれもきっと号泣すると思いますわ。。。

『白夜行』 『流星の絆』 『手紙』 『容疑者Xの献身』
映画やドラマでは泣かされましたもん。そして今回も(T_T)











竹野内くんですしね~。
残虐な少年犯罪と言うテーマをどう見せてくれるのか、
そこには答えがあるのか…

観逃した映画は数あれど、機会があれば観たかった作品でした。

竹野内くんが『BOSS』で魅せる野立参事官のキャラもいいんですけどね、
私はやっぱり『太平洋の奇跡』や、こういう正義の顔を見せる役が好きです。
イイ顔するんですも~ん。












そして、期待通りの寺尾さんでした。
『半落ち』でも見事でしたけど、年々その凄さを魅せられる度に、
宇野重吉さんが思い浮かぶようになりました。
セリフがなくても、ただそこに居るだけで魅せる重み(オーラ)。
名優を父に持つ重責は相当のものだったと思いますが、
これこそDNAを受け継ぎ、その年に近づいて来たから出せる
味わいなんだろうな~って伝わって来るものがあります。
佐藤浩市さんを見ててもそう感じたりするんです。
若い頃の彼は、逆に苦手だったんですよねぇ、私。テヘ


ネタバレあります。。。












すでに犯人の一人を殺害し逃亡中の長峰(寺尾聡)から届いた手紙を読む、
署員たちの表情も上手く見せていました。
警察の人間である前に、家族を持つ人間の感情が沸き起こるのは当然。

《逮捕されたとしても、更生と社会復帰を目的とする理由で、
 刑罰とはとても言い難い判決が下されたことでしょう。
 一度生じた悪は、決して消えることはありません。
 …
 私は、何があっても思いを果たします。   長峰重樹 》 













長峰が、犯人の少年・菅野快児(岡田亮輔)を探しやって来た、
山奥のペンションオーナー親子との出会いも良かった。

長峰を泊めた翌朝の新聞記事で真相を知った木島和佳子(酒井美紀)は、
長峰に言います。
「暴力に暴力で対抗して、根本的な問題は解決するんでしょうか。…
 長峰さんの人生までダメにして欲しくないんです」

『JIN』で仁先生が言った「暴力は、暴力を生むだけなんです」や、
『龍馬伝』で龍馬が言った「憎しみからは何も生まれん」など…
心にグッと響く言葉は残ります。その意味も分かってます。
でも理屈が通せない時があるのも真実なんですよね。
それが、にんげんだもの。。。


和佳子の父・隆明(山谷初男)も、実は知ってたんですね~。
さり気なく猟銃の使い方や心得を教えたりして…

「引き金引く時、躊躇しちゃダメです。
 躊躇した瞬間、情けがスルッと入り込んで来る。
 情けを感じたら、こっちの負けです。。。
 今引いちゃダメですよ。まだ弾入ってますから」

後で分かったこの父娘の計らいにも泣けました。
この親子も葛藤して当然。

「私、やっぱり間違ってたのかなぁ。
 父さん。あの銃、わざと?」
「俺だってあの人と同じ、娘を持つ父親だ」  山谷さん上手い(・・、)


長峰を見つけた綾部刑事(竹野内豊)。
「長峰さーん!」
犯人と言えども、呼び捨てには出来ません。
踏切で見失うものの、本気で捕まえる気はなかったようにも思えましたわ。

「警察って何ですか?
 警察が守ろうとしてるのは(市民ではなく)法律の方ってことですか。
 正義とは何かを考える暇もなければ、議論する必要もない」

そう先輩の真野刑事(伊東四朗)にぶつける綾部でしたし…

「勘違いするな。長峰は殺人事件の容疑者だ。
 それに、あの人には。。。
 長峰には未来なんてないんだよ」

さすがベテラン刑事の言葉も重いです。
犯人だから未来がない。。。じゃなく、
最愛の娘を失った父に、もう未来などないってことを読んでます。

正義感溢れる綾部も、20年、30年後にはどんな刑事になってるんでしょう。
そう思いながら、若かりし頃の熱かったであろう真野刑事を想像しますわぁ。。。


「織部と申します。明日、午後2時。川崎駅に菅野が現れます。。。」

刑事としてあるまじき行動に出る綾部も、人の道として許してあげたい。
観てる側の人間も、ペンションの木島親子と同じように、
長峰を応援したい気持ちで感情移入してるはずだと思いたい。

この綾部がかけた電話には、長峰の返事があるんですが、ここでは流れず…


犯人の少年・菅野快児を追い詰める、緊迫したラストシーン。
刑事が先に捕えるのか、長峰が無念を晴らすのか。

菅野を掴み、猟銃を突きつける長峰。その周囲を警察が囲み…

「この男は、私の娘を辱め、そして殺した!
 我が国の法律では、未成年者に極刑は望めない。
 だから、私自身が、この男に、審判を下す。
 やーーー!」

バーン!と銃声が響くと、その場に倒れたのは長峰でした。

綾部からの電話の返事はここで流れます。

「彼らに課す罰は、死にも値する、恐怖だと思います。
 それが、彼らの本当の後悔に繋がるのなら。。。」

この言葉を聞いてたからこそ、綾部は必死に長峰を守ろうとした。
猟銃が空砲だったことも…
見せ方がホント上手いですわぁ。・゚・(*ノД`*)・゚・。


身近で起きた恐ろしい事件は、忘れることはありません。
1審の死刑から無期懲役と減刑された、名古屋闇サイト拉致殺人事件は、
その判決に怒りと悔しさをどうぶつけていいのか…
ご主人を亡くし、娘と二人暮しだった被害者遺族の母親の気持ちを思うと、
気の毒で可哀想で辛くて、他人事には思えません。
長峰と同じく、最愛の娘を失った母にはもう未来などないと言ってもいい。


こんな輩が反省や後悔をし、更生するとは到底思えず。
例え出来たとしても、人の命を簡単に奪っておいて学ぶことでしょうか。
命の重みや尊さは、我が子を持っても分からない大人も居る始末。

生まれたばかりの赤ちゃんは、天真無垢で愛おしくて…
どこで人生狂わされたんでしょうかねぇ。
やっぱり親(大人)の責任は大きいと感じます。


被害者側の答えは、結局いつも「やられ損」。
許すことも出来ない、報われることもないんですから。。。


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父親は、犯人を追う。

刑事は、父親を守りたかった。

上映時間 112分
製作国 日本
公開情報 劇場公開(東映)
初公開年月 2009/10/10
ジャンル ドラマ/サスペンス/犯罪

【解説】

東野圭...
★さまよう刃(2009)★【Cinema Collection 2】at 2011年06月04日 02:09
 う〜〜何とも言えん映画だった・・・
いろいろな事を考えさせられました。
HPはこちら

 私は、少年犯罪に関しても被害者遺族にはすべての情報を公開するべきだと思ってき ...
「さまよう刃」 益子昌一 監督【トリ猫家族】at 2011年06月04日 10:47
一人娘を殺された父親が犯人の少年へ復讐を図る物語です。
救われない魂たち。『さまよう刃』【水曜日のシネマ日記】at 2011年06月06日 22:18
この記事へのコメント
manaさん、こんばんは☆彡

>東野圭吾作品は大好きなんですが…
と言っても小説を読んだことはないんです。

いや~ん(笑)のっけから笑わせないで~
好きだけど読んだことないって(^^;
映像になっている作品が好きってことですね(笑)

>生まれたばかりの赤ちゃんは、天真無垢で愛おしくて…

私もいつも思う・・・どんな極悪人にも赤ちゃんの時は
あったんだよね~って・・・
どこから人生狂ってしまうんでしょうね・・
やっぱり環境なのかな(親の育て方も含めて)

憎しみからは憎しみしか生まれないと理屈では
わかっていても、目には目をのハンムラビ法典
の教えを実践しそうな私です(^^;

そそ、寺尾さん、お顔も雰囲気も重吉さんに似て
きましたよね~
今のお若い方は、宇野さん知らないよね(^^;

いい作品でしたが、映画館でなきゃ(大画面でなきゃ)
と言う作品でもないのでDVDでもいいんっじゃないかな^^

東野さんの本いいよ~。読みなさい!(笑)

PS・私はず~っと「おかあさん」って呼んでましたよん♪
とてもオシャレな義母で、子どもたち(孫)にもおばあちゃんとは呼ばせなかったし(笑)
チャーちゃんと呼ばせてましたから~♪
Posted by ひろちゃん at 2011年06月04日 02:04
おはようございまする~
私も原作も映画も見たよ。
子を持つ親なら長峰と同じ行動をとってしまうよね。
こんなムシケラみたいな奴ら、制裁を加えても罪の重さに気付かないんだろうし・・・
でも、罪の重さを知らせることもせず死なせるのも許せないというか・・・
そして、その行動が本当に正しいのか、暴力に暴力で制裁を加えることは果たして殺された娘の望むところなのか、揺れ続ける気持ちもよくわかる。
映画はいろんなサイドから見た思いが混乱することなく、
心に響くように描かれてたよね。
刑事でありながら、情に走った綾部の気持ちも本当によくわかる。
そしてベテラン刑事の伊東四朗さんの刑事としての言葉もズシッときたよね。
こういう問題は、いつも頭で考える部分と心から湧き上ってくる部分の折り合いがつかないよ。
Posted by きこり at 2011年06月04日 10:46
★ひろちゃん

こんにちは~。
遅くまで頑張ってますね~。

>いや~ん(笑)のっけから笑わせないで~
>好きだけど読んだことないって(^^;
いや笑わせるつもりはなかったんだけどぉ。
ひろちゃん、私が小説苦手だって知ってるでしょ~。
これまでにどれだけ挫折して来たか。

『手紙』の時も書店で手に取っては見るものの…
ムリと判断して置く(笑)
『告白』も半分まで読んでそのまま。
読書好きには「一日で読み入っちゃった」薄い本でもこの始末。
引き込まれる前に眠くなっちゃうんだもん。
『JIN』の原作漫画ならイケそうかなぁ?


>目には目をのハンムラビ法典の教えを実践しそうな私です(^^;
親であれば誰もがそう思うはず。
あの犯人が家庭を持ち、娘を殺された時、どう思うんでしょうね。
親が殺されても平気かもしれない彼らには、
薬物や強姦、非道の日々を平然と送る人間には一生気づかないことでしょう。

>東野さんの本いいよ~。読みなさい!(笑)
東野さんの本当に言いたい部分は、原作でしか読めないんだと思う。
だけど今はムリ。老後の趣味に取っとく(笑)

>チャーちゃんと呼ばせてましたから~♪
これいいね~!
私もそう呼んで貰いたいな~φ(.. )メモメモ
ひろちゃんが「お婆さん」って呼ぶとは思えなかったのでホッとした~^^


★きこりさん

こんにちは~。
きこりさんも読書家だもんな~。羨ましいぞ、B型なのにヾ(゚∇゚*)カンケイナイワ(笑)

どうしても親目線で見ちゃうね。
あんな夜道を一人で…(||゚Д゚)ヒィィィ!
毎晩、娘たちの帰るメールに「気をつけてね」と打ち返しながら祈る気持ちだよ。
「たまたま」狙われたって不運に絶対遭いたくない。

>こんなムシケラみたいな奴ら、制裁を加えても罪の重さに気付かないんだろうし・・・
これ思うね~。
我が子の夢ある未来は絶たれてしまったのに、奴らに未来はあるの?

長峰の言った「死にも値する恐怖」を与えること…
『告白』で、最愛の娘を殺された母親の”復讐”を思い出したんだけど、
どうしたら極悪非道なそいつを苦しめることが出来るのか?気づかせることが出来るのか…
殺したいほど憎くてても、簡単には殺したくない。
その前に、殺すなんて簡単に出来ることじゃないしね。
そしてそうしたところで、最愛の娘は戻っては来ない。
やっぱり答えなんて出ない。
だからこそ、こういう作品を観たいと思うのかもしれない。
そう思うとこのラストで見せてくれた、ベテラン真野刑事の一発は効いてましたわぁ。
東野さん、流石だと思った。
Posted by mana at 2011年06月05日 12:55
こんばんは♪
お久しぶりです(^^)

この映画には考えさせられましたよねー

確かに名古屋闇サイト拉致殺人事件とも
オーバーラップする内容でした…

私もこの映画を観ながら
23年前に大高緑地公園で起きた残虐な殺人事件を思い出していました。

当時の新聞紙面には事件の詳細と共に
中学時代の先生のコメントが言葉短く書かれていた事を覚えています。

なんでこんな事が起きちゃったのかな…

「運が悪かった」としか言いようがないのだろうか。

ほんの5~6年前に同じ教室で笑ったり騒いだりしていた人が
こんな殺人事件に巻き込まれるなんて信じられず、
もしかしたら私が大高緑地公園で
あるいは別の場所で同じ境遇に合っていたのかもしれず…

この映画を観た後で
あの事件を振り返ろうとネットで検索したら
無期懲役の判決が出た加害者についての
「心に刺さった母の言葉」という記事を見つけました。

被害者に「親」がいるように加害者にも「親」がいるんですよね。

なんだか余計に複雑な気持ちになっちゃいました…
Posted by テクテク at 2011年06月06日 23:01
★テクテクさん

こんにちは~。
中々映画館へ行く機会がなくてご無沙汰です^^;

同郷のテクテクさんと語り合えたことで、
23年前に起きた「名古屋アベック殺人事件」を振り返ることが出来、
改めて未成年の「法」を考えさせられました。

この事件はウィキペディアに、被害者と犯人たちとの会話までも詳細に書かれていて、
その残虐非道な少年少女6人の犯行の様子からも、
更生の可能性など全く見られないと感じました。
強姦した未成年男子3人をも上回るほどの冷血さを見る、
被害者女性への暴力にも加わった未成年女子3人の行為には目を背けたくなります。
ハイヒールでの足蹴り、裸にさせた体にタバコの火を押し付け、木刀で殴り続け、
命乞いの気力も失せた果ての「一気に殺して」と言う哀願も無視。
首に巻いたロープで綱引きを30分続けた上での窒息死。

私はこれを読みながら、長峰が嘔吐した瞬間の気持ちを酌みました。
人間を人間とも思わない、人間のすることじゃないことを平気に出来るこんな奴らが、
更生出来るとは思えません。若気の至りなんてレベルじゃない。

出所後の共犯者4人は、遺族に謝罪することもなく行方をくらまし、
何事もなかったかのように家族を持ち平穏に暮らしてるそうで。
反省も謝罪も倍賞もせず、そんな平和な暮らしが許されるのなら、
本当に「やったもん勝ち」ですわ。

>被害者に「親」がいるように加害者にも「親」がいるんですよね。
加害者を生んだ親の責任も大きいと思います。
犯人の家庭事情や育った環境を調べるのはそのためですもんね。
親を見れば子が分かる、その逆も然りですが。
私が仕事をしながら見る親子関係でも、その通りだな~って痛感しますよ。

娘たちには「普通」に人間らしく生きて欲しいだけ。
もちろん「やられ損」な目にも遭いたくないと願います。
Posted by mana at 2011年06月08日 13:39
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