2007年03月20日

『華麗なる一族』 最終章 後編

大介側には不利な裁判と思われましたが…
会社更生法の適用が認められ、阪神特殊製鋼の管財人が
帝国製鉄の和島所長に決まりました。役員も、一之瀬工場長以外は解任。
裁判も提訴を取り下げ、真実は闇の中。大介の社会的名誉は守られました。

帝国製鉄の傘下に入る事を反対する阪神特殊製鋼従業員達は
クーデターを起こそうとしますが、
「君達はこれからも鉄を作って行けるんだぞ。鉄鋼マンが錆びてどうする!
 …君達に情熱がある限り、ここは君達の工場だ。
 僕の夢だった高炉を君達の手で完成させて欲しい。
 そしてもう一度この工場の煙突の煙を僕にみせてくれ。頼む」
と頭を下げる鉄平。もう一度この工場の煙突の煙を…

銀平に「万俵大介の本当の狙いは何だったんだ」と尋ねます。
全ては大同銀行を飲み込むためと知った鉄平は、
「ありがとう…お前はず~っと前から分かってたんだな。
 辛かったろ。悪かった。じゃ」と去ります。何も言えない銀平の目には涙が。

大同銀行が吸収される相手を知った三雲は「謎が解けました」と大介に言います。
すでに綿貫率いる生え抜き派が団結しており、三雲の説得空しく
「日銀から来られたあなた達が今まで我々生え抜きに
 何をして下さったと言うんですか」に返す言葉がありません。

鉄平は大介を庭に呼び、話しを聞きます。
「どうしたら僕の思いはあなたに伝わるんですか!
 …もう何の力もなく何もしてやれない」
「まだそんな甘い理想を言ってるのか」
「その理想のために僕は闘って来たんです」
「死んだ爺さんがよくそんな事を言っていたよ。
 私よりお前の才能を高く買っていてな」
「僕が本当にあなたの息子だったら、こんな戦いは無かったはずですよね。
 あなたはこれで僕やおじいさんに復讐したつもりですか。
 僕は普通の家族で居たかった。ただそれだけです」
「私だってそう望んでいた。だが、お前は生まれてしまった」
これには鉄平もショックだったでしょう。
「僕が、、、生まれなければ」
涙を流し、これ以降はただ聞いていただけの鉄平でした。
「正直そう思う事がある。お前が爺さんの子じゃなかったら、
 私も今とは違った人生を送ったかもしれないと。
 そんな事を思う自分がとてつもなく嫌になる。
 私も理性ではお前を愛そうと努力した。だが感情がそれを許さなかった」
鉄平の目から涙がこぼれます。
「お前も辛かっただろう。その事には私も同情する。だが私だって苦しかった。
 この苦しみはどんな事があっても一生消える事はない」
鉄平に近づき、
「それがお前と私が背負った宿命だ」
と大介も目を潤ませ鉄平に告げると、その場から去りました。
何も言い返さず、空を仰ぎ放心の鉄平。
池に向かうと将軍が現れ、憎しみの目でそれを見つめ、
夢中で何度も石を投げつけるのでした。
暗くなるまで、工場が見えるその庭のベンチに座ったまま…
覚悟を決めたんですね(/_;)

12月24日、街はクリスマスの賑やかさ。
赤い公衆電話から自宅に電話をします。
「太郎…お前は強い男になるんだぞ」
涙をこらえながら「約束だぞ」と最後の言葉をかけました。
「あなた今どこですか?、、、あなた」「早苗、、、メリークリスマス」ガチャッ!
涙で精一杯の言葉でした。
猟銃を肩に、丹波篠山でお爺さんや三雲と夢を語った思い出の場所へ向かう鉄平。
その後ろ姿は見るに耐えられません。もう涙が止まらないし(T_T)

私は日付が気になり、ここからの数日間、鉄平はどう過ごすのだろうかと。
数日を過ごしても覚悟に変わりはないのは、裁判に負けたからでもなく、
この先の工場を心配したからでもない。
大介を苦しめていたのは自分だったと改めて知った事。
自分が生まれてしまった宿命を自分で絶つと覚悟したからこそ、
手紙に自分の正直な気持ちを綴り、この世から自分を失くす事で
父を解放してあげなくてはと。大介を「あなた」ではなく「お父さん」と書いた
鉄平の気持ちが優しく胸を打ちます(/_;)
いつもそうでした。人を憎まずの鉄平。

吹雪の中、あの山の上の木の下に腰を下ろし、手には猟銃を…
早苗の元に手紙が届きます。
「早苗すまない。結局僕は自分勝手で卑怯な方法を選ぶ。本当に申し訳ない」
自殺するであろう鉄平の姿を見てる時間がとても長くて嫌でした。
木村君だから?配役が別人でも?想像してみたり/(-_-)\

家族写真を見て覚悟を決め、右足の靴紐を解き、靴下を脱ぎ、
長い銃口を喉元に向けました。どうするのか想像がついてしまい(/_;)
その時日が差したんです。それを見て少し微笑み、祈るように目を瞑り、
目を大きく見開いた瞬間!バーンッ!もう号泣ですよ(T^T)
泣けて泣けて、早苗と共に号泣です。
鉄平が~!木村君が~?って何だか錯覚もあるような複雑な思い。

その頃大介は、阪神・大同合併協定調印式共同記者会見が開かれており、
銀平を通して渡されたメモには[ご令息 鉄平氏 丹波篠山にて猟銃自殺]と。
メモにしてはとても達筆(登場した文字は全て達筆で感心しましたけど)。
大介は篠山警察署に駆けつけ、そこで死亡診断書の確認をしますが…

私は、前田吟警官の「弾は一発しか込められておらず、男らしい死に様でした」
ってセリフがピンと来ませんでした。男らしい死に様って肯定的な物言いが(-_-;)
鉄平の血液型はB型と判明。戦時中の集団検査ではミスがよくあったそうで…
ってえらい迷惑ですよ!
「あなた、鉄平さんは私とあなたの子供だったんです~~」
と泣き崩れ鉄平に謝る寧子。
「何と言う残酷な」と言う父に銀平は、
「兄さんを殺したのは僕とお父さんです」と涙を流します。
早苗は「鉄平さんの最後の思いが綴られています」と手紙を渡しました。
やはり『白い巨塔』のラスト、財前の遺書が流れるシーンが思い出されます。

[思えば僕の人生の中心にはいつも父が居た。僕はずっとただ父に愛されたい
 と願い、父に褒めて貰いたくて人一倍勉強し、仕事にも打ち込んで来た。
 …もしかすると父もまた、僕が生まれたせいで出来た心の傷を埋めるために
 合併と言う大きな野望を抱いたのかもしれない。全ての不幸は僕がこの世に
 存在した事が原因だ。…本来僕は生まれて来てはいけない人間だったんだ]

涙を流す大介がひざまずき、棺に手をかけます。
[なのに母は僕を生んでくれた。感謝の思いで一杯だ。
 …夢を追ったこの2年は僕の誇りだ。支えてくれた全ての人に心から感謝する。
 迷惑をかけた全ての人に心から詫びる。これを機に父にも母にももう楽になって
 欲しい。…憎み合っていても、血は繋がっていなくても、僕の父親は
 万俵大介だった。せめて一度でもお父さんに微笑みかけて欲しかった]

涙を流し悔いる大介。鉄平の顔を見つめ、
頬に手をやり「鉄平」と声をかけ棺に顔を埋めて泣きました。
もうあの憎たらしい大介の姿はなく、初めて本当の親子になれたのを見て
涙が止まりませんでした。最高潮のシーンでした。と書きながら今も泣いてます。
サントラを聴きながら打ってるせいでの臨場感もあり、
あのシーン、このシーンが思い出され涙で文字が読めません(T_T)

葬儀の日、大介は「最後に鉄平に見せたいものがある」と
工場の煙突から出る煙を見せるのでした。
「鉄平は大きなものを残して旅立ちました。私はそれを重く受け止めています。」
と三雲に話すその顔は何だか穏やかでした。
野望、怒り、悲しみ、悔やみ、新たな決意、北大路さんの表情での演技は流石。

相子へ手切れ金を渡した事も、鉄平の意思を受け入れたのだと思いました。
そして「君への気持ちは今も変わらない。だが、これが私の下した決断だ」
と相子への感謝も大介の表情と5千万と言う大金が表していると思いました。

銀平が妹達の前で話した「お父さんは銀行家の理念を失い、後継者も育ってない。
いくら大きくなっても志を失った銀行の未来は明るくないですよ」の言葉通り、
発足したばかりの東洋銀行も、永田大臣の思惑により他銀行に飲み込まれる
運命に。それを美馬が任されます。
辛い立場の美馬でしたが、大介に微笑んだ瞬間、心に決めたのでしょうね。
そう「食うか食われるか」です。

手紙を書き終えようとする鉄平。
[…志を忘れた時、栄光はすぐに、終わりへ向かうだろう]とペンを置きます。
窓に入る朝日を見て思います。
[でも僕は、なぜ明日の太陽を見ないのだろう]と。  完


将軍は死んでいました。主人を失い、役目を果たし終えたように。

【半年後、鉄平の夢は実現した その火は今も燃え続けている】

『白い巨塔』と比べては何ですが、同じく見応えのあるドラマでした。
最終回も期待以上のもので感動しました。何度も見ては泣きました。
コメディものも好きですが、私は人間の深層部分を突き、
そこで気付いた人間が本来の道へ進む時を見るのが好きです。
出逢った人間で人は変わる。
「理想と信念を持つ人間。それに人はついて来るんです」
と言った銀平の言葉が心に残ります。その通り、鉄平の死が無駄では
無かった事で、こんな悲しい終わりでも救われましたから。

ここへ足を運び、この長い記事を読んで下さった事に感謝します。
そしてとても長くなってしまった事を、詫びる…(笑)

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『人間はちっぽけな存在だ。
自分を強く見せようとして、背伸びしては傷つき、
その傷口を自分自身でひろげてしまう、愚かで弱い生き物だ。
だからこそ人間は、夢を見るのかもしれな...
木村拓哉さんの似顔絵。「華麗なる一族」最終章 後編(最終回)【「ボブ吉」デビューへの道。】at 2007年03月21日 16:03
銭高(西村雅彦)が法廷で証言するものの、
大介(北大路欣也)によって鉄平(木村拓哉)は訴える術も、
夢をみる場所も奪われてしまう。
『華麗なる一族』最終章後編【ド素人日記】at 2007年03月22日 12:16
◆第一話 1/3  2/3  3/3◆第二話 過去の悲劇と真実1/2  2/2◆第三話 引き裂く運命 1/2  2/2◆第四話 悲しき裏切り 1/2  2/2◆第五話 運命を分けた死 1/1◆第六話 万俵家の崩壊1/1...
華麗なる一族【YouTube情報局】at 2007年03月28日 18:29
この記事へのコメント
レビュー、お疲れ様でした!(^_^)

やっぱり予想通り、鉄平は正真正銘大介の子供だったみたいですね。
しかもそれが自殺の後に判るとは、皮肉なものです。
何でもっと早くちゃんと調べなかったのか~(^_^;)
って、ドラマになりませんが(笑)

それにしても北大路さんの演技は凄かった!
目の動き、表情、筋肉一つ一つが何も語らずとも伝わってきて、
最後の美馬が入ってきた表情を見ただけで、何かを感じ取った…
というところが、ホントお見事でした。
もちろん棺の中の鉄平に号泣しながら…というシーンも、貰い泣き。
鉄平の死をきっかけに、万俵家が一つになったのはよかったけど、
後の転落を予感させる終わり方で、悲しい感じでしたね。

でも木村君も負けてなかったですよね。
あのプレッシャーの中で、よく頑張ってたと思いますわ。
そうそう!「男らしい死に様…」ってね~(^-^;A
そういう時代だったのかな…。

3ヶ月間、見応えのあるドラマで楽しめましたが、男社会って
大変なのね~って感じで、観てる方も気難しい顔をしてたかも。
次クールの日9は、大笑いしたいです(笑)
Posted by りんりん at 2007年03月20日 18:29
これでも泣く泣く切り捨てた部分もあるんですよ~、相当力はいってますねσ(^_^;
相子の強がる言葉の後泣き崩れる所とか、そうそう美馬の表情で大介が感じてしまった所とか、それぞれの心情がよく表れてた最終回でしたね。

もう最後は実の親子でなければ終われないドラマでしたもん。
鉄平自身が血液型をちゃんと調べとかないとね~。血液型占いもハズれてたでしょうし(笑)

木村君もですが、北大路さんは本当凄かったですよね。
代表作として語り継がれる事間違いないでしょうヾ(゚∇゚*)ナニサマ?(笑)
でももうこれで終わりにしてくれないと持ちませんわぁ(^▽^;)
大介のその後はそれなりに頑張って欲しいものですヾ(゚∇゚*)オイオイ

「男らしい死に様」は、そうかぁ、時代がね~、流石りんりんさん。
木村君贔屓で見てるので、警官がそんな事言うんかぃ!って突っ込んでましたσ(^_^;

全国の皆さんが、相当気難しい顔してましたよ(^_^;)
このドラマの後ですよ、大笑いなんて…冗談じゃない!(笑)
Posted by mana at 2007年03月21日 00:05
manaさん、はじめまして。
コメント、TBありがとうございました。

>男らしい死に様って肯定的な物言いが(-_-;)

やっぱりおかしいですよね。
どうしても自殺を肯定しているようにしか聞こえなくて、
違和感を感じました。

今の時代にそんな台詞入れちゃっていいのかな?
苦情がくるかもよ。と、要らぬ心配までしてしまいました(^_^;)


ちなみに、私も木村さん贔屓です(笑)
このドラマも、完全に木村さん見たさだけで見続けてしまいました。
だから、冷静な見方をしてしまったのかな?
Posted by にな at 2007年03月22日 12:15
になさん、来て下さってありがとうございます。
こちらこそ、コメント&TBありがとうございます。

「男らしい死に様」と木村君贔屓♪( ^^)/\(^^ ) ナカマ!!
安心しました(^。^;)ホッ

このドラマは賛否両論で、色んな所を突っ込まれ、苦情も多そう?
それでも木村君が演じてくれて良かった!木村君だから良かった!と私は思いたいσ(^_^;

冷静が何よりです。
私のように冷静さを失ったら真実(本質)が見えないかもしれませんから(笑)
Posted by mana at 2007年03月22日 13:23
はぁ~。
読み終えてため息が・・・。
相変わらずmanaさんのストーリー解説はすばらしい。
本当に読みやすいです。
こちらまで話に吸い込まれてしましました。
まだビデオを見ていないのですが、どうしてもストーリーを知りたくて読んじゃいました。
原作での最後は主人から聞いて知ってましたので。
でも、まさか大介の実の子だったとは!?
は~なんだか無情ですね~。
Posted by ちょこレピ at 2007年03月22日 16:02
ちょこレピさん、読んで頂き…お疲れ様でした~(^_^;)
自己満足のレビューですけど、嬉しいお言葉ありがとうございます。
今クールは一番のめり込んだドラマかもしれません。木村君ですし(^▽^;)
先にストーリーを知ってしまって大丈夫でした?
原作はもっと詳細で凄いんでしょうね。
もう大介が実の親でなければ終われませんでしたからね~。
お陰で最終回は盛り上がりました\(^o^)/ワーイ
一度でいいから微笑みかけてあげて欲しかった!…無念でなりません(笑)
Posted by mana at 2007年03月22日 23:57
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